シリアに分布するユーロオオクワは、Dorcus parallelipipedus var. reichei Ganglbauer,1886 と、変種としての記載がなされており、この学名から国内では、「レイチェオオクワガタ」と呼ばれることもあります。
ヨーロッパの個体と比べ、♂♀共に体型が細長く、光沢も強目であるようです。また、♂の複眼後方の突起が比較的良く発達しており、♀の上翅に明瞭な点刻列が現れるのが特徴です。
変種というのは、亜種の一段階前の種分化の状態で、国産ミヤマのエゾ型やフジ型といったものがこれに当ります。亜種と異なり、複数のタイプが混生している箇所が存在します。
シリア産ユーロオオクワの場合、♂よりも♀の上翅の点刻列の有無の方が分かりやすいと思うので、♀を基準に考えますと、上翅に点刻列のある「レイチェ型」（元はドイツ語なので「ライヒェ型」？）と、点刻列の無い「標準型」とが、どこかで混生していることになります。この変種はシリア産の個体で記載されていますので、シリアでも混生しているのでしょうか？ シリア産の標準型個体を見てみたい所です。
レイチェ型のユーロオオクワがどの辺りにまで分布しているのか、興味が持たれますが、現在飼育中のトルコ産の個体は、どちらかというとレイチェ型に近い特徴を持っているように思われます。しかし、手元の個体に限って言えば、♂♀共に体に幅があり、♀の上翅の点刻列はやや弱い感じ（原名亜種とシリア産との中間位）がします。
単なる個体差という可能性もありますが、シリア産と同じ変種である可能性、そしてこの種の上翅に点刻列を有するタイプのユーロオオクワが変種ではなく、亜種である可能性もあるかと思います。
